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2018年2月 2日 (金)

雑草はなぜそこに生えているのか・感想

Zassou1  稲垣栄洋著「雑草はなぜそこに生えているのか」(ちくまプリマー新書)を読みましたので紹介させていただきます。
 著者は静岡大学大学院教授、雑草生態学の研究者です。雑草を追究し、雑草についての著書も多いです。最近では、雑草からみた日本文化論なども書いておられます。

 では簡単に、内容の一部を紹介してみます。(項目は私が勝手に設定しました。)

【雑草の定義は?】
 著者によれば、雑草の定義はきわめて曖昧なもののようです。
アメリカの雑草学会の定義は、「人類の活動と幸福・繁栄に対して、これに逆らったりこれを妨害したりするすべての植物」だそうです。一言で言えば、「邪魔になる草」です。 しかし、邪魔になる植物といっても、ヨモギは雑草ですが、草餅になったりして役に立つこともあります。従って、雑草を厳密に定義することはできず、「邪魔になることが多い植物」といった程度の曖昧な定義なのだそうです。
 日本には、およそ7000種の種子植物があり、雑草として扱われるのは、僅か500種、よく目にする主要な雑草は100種にも満たないそうです。
 どんな植物でも雑草に成れるわけではないのです。
 雑草への道のりも、けっこう厳しいのです。

【雑草は強い植物?】
 「雑草」といえば、私たちは「踏まれても踏まれても立ち上がる強い草」と思っています。「雑草魂」という言葉もよく使われます。 
  しかし、著者は、「強い草」というイメージは違っていると断じます。雑草とは、実は弱い草なのだそうです。踏まれても立ち上がらないのです。
 植物の世界は、光と水と土を奪い合う激しい生存競争の世界です。植物にとって豊かな森の中では、雑草は光の奪い合い競争に負けてしまい、生存することはできません。つまり、競争には弱い植物なのです。

 【雑草は攪乱依存型植物】
 環境の整った土地で勝利する植物を、競争型植物(C型)といいます。自由競争に強い植物です。
 しかし、C型植物がいつも勝利するとは限りません。砂漠などの極度にストレスがかかる土地では、サボテンなどが生き残ります。ストレス耐性型植物(S型)です。
 雑草は攪乱依存型植物 (R型)です。人間は土地を耕したり、草刈りをしたり、開発したり、いつも環境を攪乱しています。このような攪乱された、荒れた場所でうまく生き延びているのが雑草たちなのです。人に寄り添う植物とも言えます。

 【雑草の巧みな戦略】
  〈発芽戦略〉
 弱い雑草にとって、いつ芽を出すかは生死を分ける問題です。雑草の発芽は、暖かくなれば一斉に芽を出すというような単純なものではなく、複雑な休眠の仕組みを持っています。一度低温の状態を経験しなければ、暖かくても芽を出さないのです。冬の初めに暖かいからといって芽を出せば、後にやってくる寒さで全滅してしまいます。
 芽を出す準備をしても、条件が悪ければ再び休眠するという二次休眠という仕組みもあるそうです。雑草は寝てチャンスを待つ植物なのです。
 また、雑草の種子は、ある条件になれば一斉に発芽するのではなく、それぞれの種子には個性があり、発芽の時期が微妙にずれるのです。一斉に発芽すれば全滅するかも知れません。だから、さみだれ的に発芽するのです。人が草刈りをしても、雑草は直ぐまた生えてくると思うのはこのためです。

 〈多様性戦略〉
 農作物は、一斉に芽を出し一斉に実をつけます。農作物は均一性が大切なのです。
1840年代にアイルランドでジャガイモの疫病が発生し、ジャガイモが全滅し100万人の人が餓死するという事態が発生したそうです。
 様々な環境変化に対応するためには、均一性ではなく、多様性が必要なのです。雑草は、多様な性質を保持し、多様な環境に対応して生き延びているのです。
 例えば、スズメノテッポウという雑草は、人間の作り出した環境である畑と水田では、種子の大きさとか数が微妙に違うのです。水田の方は種子が大きく数が少なく、畑の方は種子が小さく数も多いのです。それは、畑の方が環境の攪乱が大きいからです。水田は、環境変化が周期的で安定しています。
 微妙な環境にも対応できる多様性を持っているからこそ、生き残れるわけです。

 〈雑草の生殖と繁殖戦略〉
 雑草の繁殖戦略の基本は、どんな困難状態になっても必ず種子を残すことだそうです。そのために、多様な仕組みを進化させているのです。
 巧みな仕組みで昆虫をおびき寄せ受粉する、もし昆虫がいなくても自動的に自家受粉で繁殖するという、二重に保険を懸けた仕組みをもった雑草もいます。例えば、ハコベやツユクサ、オオイヌノフグリなどは、「自動自家受粉」の仕組みを使っています。ホトケノザなどは、「閉鎖花」といって、つぼみの中で自家受粉してしまう花を、もしもの時の保険として持っています。
 ………と、まあこんな調子で、この本は雑草の面白さ満載の本です。

 著者は述べています。……雑草は、「踏まれても踏まれても立ち上がる」強い植物ではない。時には、チャンスは寝て待ち、どんな困難な状況になっても、「必ず花を咲かせ種子を残す」植物である。「大切なことは見失わない生き方。これこそが本当の雑草魂である」。……
      *******
 自然環境は多様性に富み、様々な攪乱も起こります。この多様性の中で、それぞれの個性うまく適応させて生きているのが、様々な雑草たちなのです。
 人もまた、多様な個性をもった生き物です。多様な個性が様々な分野で発揮できる社会。多様な個性が尊重される社会。そういう社会が今、求められています。
 経済的効率のみで人々が選別され、多様な個性が圧殺される社会。そういう社会は脆弱な社会ではないでしょうか。
 雑草の生き方から、我々人も大いに学ぶべきものがありそうです。
 本書では、著者から若い読者への、雑草から学ぶ生き方のメッセージが満載です。
 お薦めします。    では。また。

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コメント

墓石さま こんばんは。
雑草のお話、面白く拝読しました。

昨年11月に入って、なぜかプランターに
1本のひ弱なコスモスが芽を出しました。
もう季節外れ。それでも支柱を添えたら大きくなって
年を超え、雪にも負けず今日まで花を咲かせていました。

そして今日、もう、新しいつぼみはついていないので、
「ご苦労さん」といって、花も葉も枯れたコスモスを
プランターから抜いたのでした。

コスモスは雑草ではないのでしょうが、
植物の生命力に感動しました。
「多様性」、きっと人間の命も多様なのだと思います。

舗装道路の隙間に生えたハコベが愛おしいです。
鳥もさえずり始めました。
雑草のように、どうか生き延びてくださいね。

投稿: ひかる | 2018年2月 2日 (金) 19時47分

ひかるさん、こんばんは。
コメントありがとうございます。

エ-ッ! 冬のコスモスですか。すごいですね。
寒さに強い遺伝子を隠し持っていたかもしれませんね。
植物もいろいろ、人もいろいろなんでしょうね。

雑草のように生きる、なかなか難しそうですね。
私は春を目指して、今は休眠中ですが、
果たして春になったら元気に芽を出せるかどうか
心配です。最近、ちょっと弱気です。
ひかる家の冬コスモスのように、頑張ります。
ありがとうございます。

投稿: 墓石 | 2018年2月 2日 (金) 20時18分

墓石さん おはようございます。(*^-^*)

私は農家だったので、いつも雑草との闘いで、
「踏まれても、、、」の世界と思ってましたが、
色んな摂理なんですね。刈り込んでも、除草薬を
撒いても出て来ますね。

オオイヌグリやホトケノザも保険があるとは
知りませんでした。

人も個性豊か。その個性を尊重する社会でありたいですね。

投稿: 輝子 | 2018年2月 3日 (土) 10時24分

輝子さん、おはようございます。

人の立場からすれば、雑草ほどしつこく厄介なものは
ないですね。
雑草の世界も知れば知るほど面白いですね。

明日は立春ですが、まだまだ寒さが続くようです。
風邪を引かないように、引きこもっていますが、
外の様子も気になります。
輝子さんも風邪など引かないようにして下さい。

投稿: 墓石 | 2018年2月 3日 (土) 11時37分

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