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2017年1月20日 (金)

「一日一日を大切に生きる」を考える

 ~長田弘作、「最初の質問」という詩について~

 難病に罹った私に、残された時間は少なくなってきました。日々を大切に生きねばなりません。しかし、「一日一日を大切に生きる」とはどんな生き方なのでしょうか?
 目標を持ち、目標の実現に向けて一日一日努力する、これもありそうですね。
 人のためになることを見つけて、コツコツとやっていく。一日一善。これもありますね。 「病気で身動きできなくなり、たとえ介護されるだけの身になっても、祈ることはできる」。これは、聖路加病院の日野原氏の言葉です。
 人はそれぞれに大切にしたいものがあり、生き方も違います。「一日一日を大切に生きる」に、唯一の正解というようなものはありませんね。いろいろな考え方があって当然のことだと思います。

 長田弘さんの詩に、「最初の質問」という詩があります。今回は、この詩を手がかりに、この詩が示す、人にとって大切なものとは何か、「一日一日を大切に生きる」とは何かについて考えてみます。著作権の侵害にならないよう、切れ切れの引用になりますが。

~♪ 「最初の質問」   (長田弘)
  今日、あなたは空を見上げましたか。
  空は遠かったですか、近かったですか。
  雲はどんな形をしていましたか。
  風はどんな匂いがしましたか。

  あなたにとって、
  いい一日とはどんな一日ですか。
  「ありがとう」という言葉を、
  今日、口にしましたか。 ♪~

  Taisetu201_02_2 私は現役で働いていた頃、日々の忙しさにまぎれて、青い空や流れていく雲に挨拶することもありませんでした。日々吹いている風の匂いを感じとることもありませんでした。
 自然との語らいやありがとうという感謝の言葉のない一日が、いい一日であるはずがありませんね。

 

~♪ 窓の向こう、道の向こうに、
   何が見えますか。
   雨の雫をいっぱい溜めたクモの巣を
   見たことがありますか。

   樫の木の下で、あるいは欅の木の下で、
   立ち止まったことがありますか。
   街路樹の木の名を知っていますか。
   樹木を友人だと考えたことがありますか。 ♪~

 Shubun24seki_013_2
 雨の雫をためたクモの巣。自然の中にあるさりげなく美しいもの。
 街の中に、人のように立ち尽くす一本の欅。
 私たちは本来、草木を友とし、季節のうつろいや草木の生命力に心を動かされ生きてきました。しかし、日々の忙しさの中で、いつの間にかそのことを忘れてしまっているのではないでしょうか。  

 

  Risshun901_02_3長田さんは、「独り立つ木」という詩の中で、次のようにも述べています。
   「・・・ひときわ枝々をゆたかにひろげて、やわらかな影を落としてきた一本の大きな欅の木。雨の日には雨の影を、晴れた日には日の色を、夜には夜の薄闇を、巡る季節のなかにじっと畳んできた、静かな木だ。
 その木を独り立つ木にしたのは、みずから森を失いつづけてきた、人間の長いあいだの営みの結果にはちがいない。
  たった一本、これほどにも高い欅の木がそこに在るという、ただそれだけの爽快な事実。ただ在るというだけのことが、その木のように潔く存在することであると知ることは、日々のなぐさめだ。・・・」と。

~♪ このまえ、川を見つめたのはいつでしたか。
   砂の上に座ったのは、
   草の上に座ったのはいつでしたか。
   「うつくしい」と、
   あなたがためらわず言えるものは何ですか。
   好きな花を七つ、あげられますか。
   あなたにとって「わたしたち」というのは、だれですか。  ♪~

 Shunbun201_01_2
  遙かに流れていく川の流れ。砂の感触。草の匂い。
 私たちは、素直に美しいと感じるものを、日々暮らしの中で持てているでしょうか。
 携帯やスマホを欲しがる子どもたちは、「みんな」も持っていると親を説得しようとします。私たち大人は、社会や自然を含めた、広く豊かな「みんな」や「わたしたち」という考え方を持てているでしょうか。

~♪ 夜明け前に鳴き交わす
   鳥の声を聴いたことがありますか。
   ゆっくりと暮れていく
   西の空に祈ったことがありますか。

   何歳の時の自分が好きですか。
   上手に年を取ることができると思いますか。
   世界という言葉で、
   まず思い描く風景はどんな風景ですか。 ♪~

  A0011yuhi228_01 静かな夜明け前の鳥の声。生き物たちの活動の始まり。明けていく朝の風景。
 祈りのように赤く染まり暮れていく西の空。静かな一日の終わり。
 生き生きとしていた頃の想い出。
 これらは、すべて良い一日の材料ですね。
 人は誰でも、ゆっくりと死へ向かって歩んでいます。焦りや不安、恐れではなく、おおらかに、ゆっくりと死を受け入れていく、そんな気持ちを持てることが、良い一日の条件ですね。
 世界はどうしようもなく戦争をくり返してきました。不正義と混乱に満ちた世界ではなく、人びとが営々と築き上げてきた歴史や文化や芸術、それらの豊かな世界を心の中に描くことができるのは、良い一日のためには必要ですね。

~♪ 今あなたがいる場所で、
   耳を澄ますと、何が聴こえますか。
   じっと目をつぶる。
   すると何が見えてきますか。

   問いと答えと、
   いまあなたにとって必要なのはどっちですか。
   これだけはしないと、
   心に決めていることがありますか。  ♪~

0418kouno326_01 人はいつの頃から、騒々しくしか生きられなくなったのでしょう。静かに沈黙に向き合い、沈黙の声を聞く、目を閉じて過ぎ去った過去や未来と対話する、そんな時間が一日には必要ですね。
 何かを成し遂げることも意味があることですが、何かをしないことにも、同じように価値があることに気付くことがあります。 

 

~♪  いちばんしたいことは何ですか。
    人生の材料は何だと思いますか。

    あなたにとって、
    あるいはあなたの知らない人びとにとって、
    幸福って何だと思いますか。     ♪~

 人はやりたいことを追求し、幸福な自分の人生を形作ろうとしてきました。
  長田さんは言います。
 「大切な日常を崩壊させた戦争や災害の後、人は失われた日常に気づきます。平和とは日常を取り戻すことです。」、「敵を打ち倒すべき戦争によって危うくされてきたのは、敵ではなくて、Home(ホーム)だったのだ。」と・・・。
 幸福とは、どこか遠くにある特別なものではなく、いつもと変わらない、今ここにある日常生活のことなのです。

~♪  時代は言葉をないがしろにしている。
    あなたは言葉を信じていますか。       ♪~

 いよいよ、詩人の最後の質問です。「あなたは言葉を信じていますか?」
  長田さんは、別の詩で書いています。        (「魂は」より)
 「・・・ ひとが誤まるのは、いつでも言葉を過信してだ。
  きれいな言葉は嘘をつく。この世を醜くするのは、不実な言葉だ。・・・ 」
 今の時代、政治家の使う言葉ほど不実な言葉はありません。「美しい日本を作る」、「一億総活躍社会」。「女性の輝く社会」。「働き方改革」。「地方の時代」・・・・。 こんなに言葉が意味を失っている時代はありません。
 ほんとうの言葉を探すこと無しに、「いい一日」はありませんね。「いい一日」とは、嘘ではない本当の言葉に出会える日々のことなのでしょうね。
  長田さん、ありがとうございました。

  今回は、長田弘さんの「最初の質問」という詩の質問に答えるという形で、「一日一日を大切に生きる」ということについて考えてみました。
 この詩は、中学校の教科書に採用されたり、いせ ひでこさんが絵本として出しています。

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コメント

墓石さん こんばんは。(*^-^*)

長田さんの詩素晴らしいですね。
自然の一つ一つ見て、その清さ美しさ、
ドラマチックさに癒され、奥深さに涙する思いです。
写真もそんな思いがあるでしょうね。

現役の時は自然に対して、何にも感じなかったですね。
唯目の前の事をやってしまうのに精いっぱいでした。

今まで気が着かなかったことや、その日その日に
感謝するものを見つけるのが幸いな人生でしょうね。

日野原先生の公演会が2月21日に京都駅のリーがロイヤル
ホテルで10時半からあります。美味しい食事と本格的な
歌があり5千円です。3時間程で終わります。安いし、
いつも素敵な時間です。男性も来てられますよ。、

投稿: 輝子 | 2017年1月20日 (金) 18時56分

輝子さん、こんばんは。
寒い日が続きますね。体調も悪く、寒さにも負けて
完全引きこもり生活です。

気の早い春の草が、この寒さの中でも咲いていると思います。
散歩に行きたいですが、なかなか出かけられません。
今日は、二十四節気の大寒なのですが・・・。

輝子さんは神と出会われて、きっと感謝に満ちた生活を
送られていることと思います。輝子流写真に表れていますね。

日野原氏の講演会があるんですか。いいですね。
楽しんできてください。
明日も雪が降るかも知れませんね。私は、引きこもり生活です。

投稿: 墓石 | 2017年1月20日 (金) 20時32分

墓石さま

厳しいご体調の中で、心に染み入る言葉の数々…
「何かを成し遂げることも意味があることですが、
何かをしないことにも、同じように価値がある」
私も静まって、今まで見えなかった宝物発見をしたいです。

今日、やさしいことば、真実なことばと出会えてよかったです。
よき「大寒の日」となりました。
ありがとうございます。
どうか、穏やかな日々でありますように。

投稿: ひかる | 2017年1月20日 (金) 22時58分

ひかるさん、おはようございます。
コメントありがとうございます。

今頃の時間になって、やっと私の一日がスタートです。
今のところ、熱が出てこないので、今日は楽な一日が期待されます。
図書館の本の期限が来ていますので、これを返却するといのが
本日最大の仕事です。

風は冷たいですが、気持ちよく晴れてきました。
今日も、ゆっくりと一日を過ごします。
ひかるさんも良い一日をお過ごしください。

投稿: 墓石 | 2017年1月21日 (土) 10時44分

大変ご無沙汰しておりました。何度もFaceBookやこちらを覗かせていただいたりしていたにもかかわらず、ブログにコメントが書けることを見落としておりました。
今の状況はよくわかりました。そういう橋本さんの今に、かける言葉も見つかりませんが、私が言いたいことは、現状況では、以前からお話ししていた木津川堤への撮影行を、ご一緒できそうにないことが残念で仕方がないということ。でも、ひょっとして、ということがあるやもわかりませんから、私はそれを鶴首にてお待ちしています。
なお、お身体の具合が良くなくて更新できないからと、このサイトに幕を下ろさないでくださいね。橋本さんの写真と文章に、ここを訪れる者が心癒される場なのですから。

投稿: みず保 | 2017年1月23日 (月) 15時00分

みず保さん、こんにちは。お久しぶりです。
といっても、みず保さんのFacebookの方は、拝見していますよ。
私のFacebookの方は、一年間更新は止まったままです。
画像がうまく掲載できなかったり、いろいろトラブル続きで
諦めました。

最近は、特に体調が悪く、撮影に出かけられないばかりか、
通常生活にもちょっと支障が出る状態です。
もう少し状態が良くなれば良いのですが・・・。
ご訪問ありがとうございました。

投稿: 墓石 | 2017年1月23日 (月) 17時04分

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