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2015年12月 7日 (月)

物干し台読書

Soukourittou91501  最近、晴れた日はいつも物干し台に出て読書をしています。今日もよい天気でした。背中に太陽を受けると、温かくて気持ちがいいです。本を読むのに疲れると、ぼんやりと青い空を見上げたりしています。

 青い空を見上げると白い雲が流れてゆきます。遠くの方で、犬の吠え声が聞こえます。石油販売車の流す歌がが聞こえたりします。鳥のさえずりも聞こえます。道で人が立ち話をする声が聞こえます。生き物たちの声や雑然とした生活の響きにつつまれていると、以前どこかで経験したことがあるような、言葉にはできない不思議な感覚に囚われます。今ここに生きていることの幸福感や、自分はどこから来て、なぜここにいるのかという孤独感・漂泊感・挫折感のようなものが、混然と一体となった不思議な感覚です。

 この不思議な感覚の底の方には、高校生の頃愛読していたヘルマン・ヘッセの「郷愁」があるような気がします。
 「郷愁」は、自然を友として成長した主人公ペーターが、故郷を離れ人生の旅に出ます。恋や様々な経験を積み重ねますが、やがて挫折し故郷に帰ります。そして、故郷でのささやかな生活の中で再び自分を発見する、というような物語です。私と同世代以上の人にとっては、「車輪の下」とともに、よく読まれた作品だと思います。
 青春時代、故郷の屋根裏部屋で読書の喜びに目覚めたペーターが抱いた感慨が書かれた「郷愁」の一節を書き出してみます。
 ♪・・・・狭い明かり取りの窓から頭を突き出すと、屋根や狭い小路に太陽の照るのが見え、仕事や日常生活のささやかなざわめきが雑然とのぼって来るのが異様に聞こえ、偉大な精神に満たされた屋根裏べやの孤独と神秘が、ことのほか美しいおとぎ話のように私を取り巻くのが感じられた。・・・・♪
 また、次のような一節もあります。
 ♪ おお、雲よ、美しい、ただよう、休むことのないものよ! 私は、無知な子どもだったが、雲を愛し、見つめた。そして自分も雲として・・・さすらいながら、どこにいっても親しまず、時間と永遠の間をただよいながら、人生を渡っていくだろう・・・♪

  この不思議な感覚の底には、ヴェルレエーヌの詩も深く沈殿しているように思います。ヴェルレエーヌの詩は、20代の頃よく読んでいました。
 永井荷風訳の「偶成」を書き出してみます。
   ~♪ 偶成   (ヴェルレエーヌ)
空は屋根のかなたに
  かくも静にかくも青し。
樹は屋根のかなたに
  青き葉をゆする。

打仰ぐ空高く御寺の鐘は
  やはらかに鳴る。
打仰ぐ樹の上に鳥は
  かなしく歌ふ。

あゝ神よ。質朴なる人生は
  かしこなりけり。
かの平和なる物のひゞきは
  街より来る。

君、過ぎし日に何をかなせし。
  君今こゝに唯だ嘆く。
語れや、君、そもそもわかき折
  なにをかなせし。

 孤独感。漂泊感。青い空を流れる雲への憧れ。ささやかな希望。不安。ほんの少しの達成感。そして、挫折。そんな感情を一杯に抱きながら過ごした青春時代。そんな時代が私にも確かにあったのです。ぼんやりと青い空を見るとき、心の奥底に堆積していたその時代の感覚が、時として懐かしいような、不思議な感覚として湧き上がってくるのだと思います。
 ゆったりと流れる時間の中で、青い空と白い雲をぼんやり見ることは、自分の心の奥底に堆積していた過去と、無言の言葉で対話する方法なのかも知れません。
 決して言葉では語ることのできない様々な感情や想い出の断片。他人からは知られることなく、心の奥底に沈殿した無言の堆積物。おそらく人生と呼ばれるものは、これらの堆積物の集合に他ならないのではないか、そんな気がしてきます。

 ヘルマン・ヘッセの「郷愁」、「車輪の下」。
 「ヴェルレーヌ詩集」。     お薦めします。

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コメント

墓石さま こんにちは。
ステキな書斎ですね。それにひろ~い!

チェックのシャツ、青春時代が甦りますね。(60代の夫も、ずっとチェクのシャツです)
「車輪の下」私も読んだはずなのに、まったく記憶がありません。受験戦争も恋愛も無縁の環境で育って(のんびりした女子高でしたから)親ものんびり…ぼ~っとしていた青春時代でした。ただ、進路を決めるにあたって「人間はやがてみんな死んでいくのに、なぜ生きるのか?」って悩みました。

空や雲や鳥の声やいろんな音や風は、確かに、心に堆積している思いを呼び覚ましてくれる気がします。心に沈殿している堆積物からダイヤモンドが出てきたらいいな~って、妄想しました。

入院と手術はクリスマス頃ですか?以前は、病院でもクリスマスにお楽しみのサービス(医師のサンタクロースや看護師さんたちの聖歌隊が病棟をまわっていました)があったりしましたが、今は余裕がないからどうかしら…

どうか体調が守られて、無事に手術が終わりますように。

投稿: ひかる | 2015年12月 8日 (火) 11時09分

ひかるさん、こんにちは。
今日も良い天気でうれしいです。朝から今まで、物干し台読書でした。
午後は日陰になるので、散歩に出かける予定です。

「なぜ生きるのか?」の悩みですか。良い青春時代を過ごされましたね。
ひかるさんのような方は、心に沈殿している堆積物からいっぱいダイヤが
見つかりそうですね。

手術は、クリスマスの頃です。わたしは、気が小さいのでものすごく心配
しています。点滴のチューブなどをつけられると、行動の自由が制限されるし、
トイレには行けるのかとか、些細なことが気になります。なるようになるん
でしょうけどね。

投稿: 墓石 | 2015年12月 8日 (火) 12時19分

墓石さん こんばんは。(*^-^*)

墓石さんは文学者ですね。私も同じ感情はあるのですが、
表現力が無く、ダメですワ。ヘルマンヘッセ、、、私も
読んだのでした。すっかり忘れてましたよ。
呼び覚まして下さって感謝です。

一人静かにいますと、風、鳥、人の声さまざまな音に
人生を重ねもの思う時、青春を思い出しますね。
そう、青春時代、自分は何を目的に生きているのか?
人は何のために生きるのか?これは私の原点です。
この疑問の解決がないと生きていても仕方ない。
無意味と思ってましたから。

その疑問の解決が聖書にありました!だから今まで
教会へ行き、救われ洗礼を受けました。
この疑問は新島 壤さんも同じですね。
多くの方が思うものなんですね。若いときはみなさん
思ってられると信じてましたが違った!案外目先の
事しか考えないひとが多いですね。このブログで
同じ思いの人 がおられ、嬉しいです!

投稿: 輝子 | 2015年12月 8日 (火) 18時58分

輝子さん、コメントありがとうございます。

「人は何のために生きるのか?」 難しい問題です。
輝子さんは、聖書という答えを見つけられたのですね。
信じられるものが見つかり、素晴らしいですね。
わたしの場合は、なんの答えも見つけられていないです。
迷いながら人生の終わりが来そうですよ。
私は、我が儘にいい加減に人生を送ってきたので仕方がないです。

最近、ちょっと元気になって来たので、自転車で散歩に出ています。
昨日は綺麗な夕焼けになりました。

投稿: 墓石 | 2015年12月 8日 (火) 20時20分

こんにちわ。墓石さん。

ヘルマン.ヘッセ 私も読みましたー。
『車輪の下』ウィキペディアであらすじ見ました。
内容全然思い出せず…。_| ̄|o
結構はまっていたのに…。

今日も良い天気ですねー。暖かくてとりあえず嬉しいです。
読書は宮部みゆきとか角田光代 今 読んでます。


投稿: J | 2015年12月 9日 (水) 09時32分

Jさん、こんにちは。

昔読んだ本というのは、記憶が曖昧になっていますね。
二つの作品が合体していたり、筋が少し変わって記憶していたり、
重要な部分を忘れていたりです。何となく感覚を記憶していたりです。

Jさんは、読書家ですね。私は、小説が苦手でなかなか読めません。
宮部みゆき、角田光代さんも読んでいないです。
小説に、また挑戦してみます。

投稿: 墓石 | 2015年12月 9日 (水) 10時23分

墓石さま 今日も良いお天気ですね。

わたしの心の中は真っ黒けの炭素の沈殿物ばかりでPm2.5出しまくり…
ブログの記事や写真、他の方のコメントを拝見して、美しいものを心に大切にためて、それがダイヤモンドになったらいいな~って感じた次第です(^-^;
きっと、墓石さまの心に大きなダイヤモンドが隠されているのだと思いますshine

それと、点滴や管がついていてもトイレまで行けますよ~
「しびん」という便利なものもありますし!
ご心配でしょうけれど、頑張ってくださいね(*゚▽゚)ノ

投稿: ひかる | 2015年12月 9日 (水) 10時27分

ひかるさん、おはようございます。

今日も良い天気ですね。今まで、物干しに出ていました。
私の心の中には、ダイヤなど見つからないです。
悲しいヘドロの海状態です。世の中難しすぎますね。

「小」の方は、「しびん」ですか。ウーン。
「大」の方は、ウーン、あまりにも周囲に迷惑掛けそう。
小人は、心配性です。困ったもんですね。

投稿: 墓石 | 2015年12月 9日 (水) 10時54分

墓石さん、おはようございます。

「墓石さんのブログ」いつも拝見させていただいています。

お薦めの3冊、私も若い頃に読んだ一人です。
あの頃は感受性も強く、やりきれない思いを下手な詩に
綴った事もありました。

現実世界に振り回され、忙しく生きているうちにすっかり
感受性も鈍ってしまい・・(笑)

「墓石さんのブログ」を読む度、そんな私にあの頃の感情を
呼び戻してもらっています。

投稿: yasubee | 2015年12月13日 (日) 06時58分

yasubee さん、おはようございます。

yasubeeさんは、文学少女という感じだったんですね。
私は、あまり文学のことなど考えず、利己的な人間だったような気がします。
今は、ちょっと反省期に入っていると思います。
今頃になって、思春期を迎えているような・・・。

投稿: 墓石 | 2015年12月13日 (日) 12時36分

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