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2015年6月17日 (水)

沈みゆく大国アメリカ<逃げ切れ日本の医療>

 Tutumi
   少し前になりますが、「農林業と食料・健康を守る京都連絡会」(食健連)という団体の主催で、堤未果さんの講演会が開かれました。私は「食健連」とは何の関係もありませんが、もぐりで参加してきました。堤さんの最新作、『沈みゆく大国アメリカ<逃げ切れ日本の医療>』(集英社新書)と重なる内容が多かったので、この本を紹介して、講演の報告とさせていただきます。
 堤未果さんは、アメリカの大学を卒業され、国連、NGO、米国野村證券勤務を経て、ジャーナリストとなり、アメリカの新自由主義・強欲資本主義を告発されてきた方です。『貧困大国アメリカ』(岩波新書)は、あまりにも有名になりました。
 堤さんは、癌で父親を亡くします。その中で、高額療養制度を含む日本の皆保険制度が、世界的にみていかに素晴らしいものかを実感されます。「皆保険制度を守ってくれ」という父親の遺言を胸に、ジャーナリストとしての活動を続けられてきました。

   『沈みゆく大国アメリカ<逃げ切れ日本の医療>』(集英社新書)
 つまみ食い的に超要約してみます。(著者に叱られるかも・・・)

 ★アメリカからの圧力により、日本の「国民皆保険制度」は危機に瀕しています。
 中曽根・レーガン合意に基づいてMOSS協議(市場分野別協議)が始まり、それに引き続く「日米構造協議」、「日米規制改革・競争政策イニシアチブ」の中で、「日本は貿易黒字解消のために、医療分野ではアメリカに稼がせろ!」というアメリカの不当な要求に屈し、日本は、自国の新薬や医療機器開発を政治的に押さえつけ、医薬品や医療機器を高い価格で輸入することを進めていきました。日本の医薬品市場は10兆円もあり、自由な価格で新薬や医療機器を販売することができれば、これほど魅力的市場はありません。しかし、公的健康保険の薬価は、国が握っており、製薬会社が自由に決められるわけではありません。それを突破する最後の仕掛けがTPPです。TPPが締結されれば、混合診療・自由診療の解禁、株式会社の医療参入、自由薬価などにより、日本の皆保険制度は実質的に崩壊します。
  著者は、TPPばかりでなく、日本ではほとんど知られていない「TiSA」についても注意が必要だと述べています。「TiSA」とは、23カ国で進められている、公共サービス分野などを自由化(つまり商品化)しようとする国際条約です。この交渉の中でアメリカは、「国民皆保険制度」や、病院経営への株式会社の参入を阻んでいる「医療法」の改悪などを露骨に要求しています。

  ★日本政府の新自由主義的政策によっても、「国民皆保険制度」は崩壊させられています。
 OECDのデータを見ると、日本では、医療費のGDPに占める比率も、一人あたりの医療費も世界各国に比べ低いのです。また、医療費が増え続ける一番の原因は、新薬と医療技術の進歩にかかる負担なのです。しかし、政府やマスコミの宣伝により、国民は、「医療費の増大が国を滅ぼす」、「高齢化が医療を破綻させる」と信じ込まされてきました。
  増大する医療費にどう対処するのか、だましの手口の一つが消費税増税です。
 日本は、所得税や法人税を基幹税として、お金のあるところから税金を取るという「福祉型」でしたが、弱い人からもまんべんなく税金を取る消費税が導入され、税制を「自己責任型」にすることが進みました。「税と社会保障の一体改革」という名前で呼ばれる改革です。消費税が増税されても、逆に社会保障の自己負担率は増加し、下がったのは法人税率です。
 次のだましの手口は、地方分権改革です。「国民皆保険」は、憲法25条に規定された社会保障の意味がありますが、政府は「地方分権改革」という美名の元に経済的効率性のみを求め、福祉の責任を地方自治体に押しつけ、様々の公共事業の民営化、学校や病院の統廃合などを進めています。これは、国が社会保障の責任を放棄する方向であると言えます。
 
 ★ヒトラーのやり方を真似た「経済財政諮問会議」
 いつの間にか毎月の保険料が大幅に増え、診療報酬の引き下げにより長期の入院が難しくなり、軽度支援の高齢者が特養ホームへ入れなくなり、年金積立金の多くが株に投資され、混合診療解禁や病院の株式会社化を可能とする法改正や医療特区、医療不動産の投資信託商品の登場、数えればキリがないほどの規制緩和が進んでいます。
 それを可能にしているのが、総理が議長を務める諮問会議で、財界を含めた身内だけで決め、閣議決定し政策が決められていくという、ヒトラーのやり方を真似た「経済財政諮問会議」、「産業競争力会議」、「国家戦略特区諮問会議」、「規制改革会議」・・・・などです。これらの会議に出る民間委員は、選挙で選ばれたわけでもない「オトモダチ」ばかりです。
 大手通販会社の社長が、薬のネット販売を認めないなら委員を辞めるとごねたり、人材派遣会社の会長が労働規制を緩めよと主張したり、やりたい放題が続いています。・・

  ★TPPを先取りする「国家戦略特区」
 規制無しの企業天国を作るための国家戦略特区法が成立しました。今後、特区内ではあらゆる規制がどんどん取り払われ、混合診療解禁・拡大、保険会社の参入、企業の病院経営など、日本医療の商品化が進められていくことになります。外資企業にとっては大変なビジネスチャンスがやってくることになります。
 日本の国民の中には、「混合診療解禁」や「申し出制医療」の意味すら理解していない人が多くいて、課題は大きいと言えます。是非、この本を読むことをお薦めします。

 ★今ならまだ引き返せる
 TPPやTiSAが結ばれたなら、日本の皆保険制度の崩壊は間違いないです。今ならまだ引き返せると、堤さんは訴えておられます。アヒルのマークの保険会社に食いつぶされる前に・・・・。 
    第一章:オバマもびっくり! こんなにアメリカ化していた日本医療
      第二章:アメリカに学ぶ、大衆のだまし方
   第三章:マネーゲームから逃げ出すアメリカ人
      第四章:逃げ切れ! 日本

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