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2015年5月12日 (火)

中沢彰吾著「中高年ブラック派遣」感想

 Doreirodo
 中沢彰吾著「中高年ブラック派遣」(講談社現代新書)~人材派遣業界の闇~を読みましたので紹介させていただきます。
 著者は東大卒業後、毎日放送でアナウンサー、記者として勤務するも、身内の介護のために退社。著述業に転身しますが、派遣労働などで年収100万円しかない時期も経験されたようです。この本は、その実体験に基づいて書かれています。

 小泉改革以降、日本の非正規労働者は、全労働者の4割に迫ろうとしています。そして本日、国会では「労働者派遣法」の改悪案が審議入りしました。この法案が通過すれば、派遣労働者は実質的に、一生涯派遣労働者であることを選ぶか、三年ごとに派遣切りに遭う派遣労働者であることを選ぶかの二つの選択肢しか残されなくなります。企業側からみれば、三年ごとに派遣労働者を取り替えれば、いつまでも派遣での仕事を残すことができるわけです。正社員も限りなく派遣で置き換えていくことが可能になるわけです。
  また、長時間働いても残業代や深夜手当が支払われなくなる制度の新設を柱とする、労働基準法など労働関連法の改正案も、今国会での成立が目指されています。日本の雇用環境は、どこまで破壊されていくのでしょうか。

 前置きが長くなりましたが、この本は、中高年の派遣労働者がどのように困難な状況に置かれているかを告発しています。
 前書きより・・・・
  今や人材派遣は「使いたい人数を安価に、必要最低限の時間だけ単純労働に従事させ、人事責任をを負わない」という派遣先企業にとって、すこぶる好都合な制度になっている。数々の違法待遇に加えて、労働者の経験やスキル、人間性、人権をも無視した奴隷に近い労働形態が横行している。・・・・・

 第一章:人材派遣という名の「人間キャッチボール」
    ~「いい歳して、どうして人並みのことができないんだ!?」~
  労働者からのピンハネ搾取を禁じた労働基準法と、一般労働者派遣を認めている派遣法とは、相矛盾する法律であると著者は指摘します。人材派遣会社と派遣先企業との間で行われる無責任な「人間キャッチボール」、ボールの種類や性能は問わない、思った通りに飛ばないボールは捨てる、このような実態が広がってきていると・・・。
 中高年者に準備されている多くは、時給800~900円の「三種の辛技」(警備、清掃、介護)であると述べています。

 第二章:人材派遣が生んだ奴隷労働の職場
   ~ノロウィルス感染者に「大丈夫ですから勤務にいって」~
 お菓子の工場での製造補助。女性に大人気の職場。パティシエにお菓子作りを教えてもらっちゃいましょう」という洋菓子工場への派遣。待っていたのは、消毒用の塩素ガスがたちこめる密室内での、6時間に及ぶイチゴのヘタ取り作業。
 「倉庫内での軽作業」という説明の仕事。自分よりも背の高い、ガムテープで固められた段ボールの解体作業。工具も渡されずに悪戦苦闘。
 人数確保のため、ノロウィルスに罹った人を無理矢理食品会社に派遣した派遣会社。
 労働者のピンハネをする派遣会社、人件費のコストを削減しようとする派遣先企業、両者の無責任な「人間キャッチボール」の実態が告発されています。

 第三章:人材派遣の危険な落とし穴
   ~「もうくるなよ。てめえみたいなじじい、いらねえから」~
 経済界財界の総本山、日経連が1995年に発表した「新時代の日本的経営」が、労働者派遣の起点であると著者はいいます。ここでは、労働者を三つの階層に分類することが提案されています。 長期蓄積能力活用型グループ(終身雇用の正社員)。高度専門能力活用型グループ(専門知識をもった有期雇用者)。雇用柔軟型グループ(低賃金有期不安定労働者)。
 雇用柔軟型グループ(低賃金有期不安定労働者)、この労働者を供給する役目を担うのが人材派遣会社というわけです。
 官公庁、自治体、外郭団体でも派遣労働が拡大しています。意外と知られていないが公立学校でも非正規化が進んでいます。
 著者は次のように述べています。
「問題のある派遣会社の顧客リストには驚くほかない。最高裁判所、法務省、厚生労働省、国土交通省、財務省、総務省、文部科学省等の中央官庁。全国の地方自治体が運営する美術館や大ホール、運動場などの公共施設。新聞社やテレビ局などの大手マスコミ、大手通信会社、大手金融機関、大手小売、大手製造......世間から真っ当と見られている団体、企業がこぞって人材派遣会社の繁栄を支援している。歪んだ労働市場に寄生し、中高年を低賃金の奴隷労働で酷使し、ピンはねで肥え太る人材派遣......彼らの増殖と繁栄は底辺の労働者のさらなる困窮と表裏一体であり、日本社会の創造的な活力を削いでいるのではないか」と。

 第四章:悪質な人材派遣会社を一掃せよ
 ~「もう仕事紹介してもらえないよ。かわいそう」~
 日本では、非正規労働者は、労働者の4割近くを占め、2000万人を越えています。この内の6割以上が40代以上の中高年だといいます。欧米との比較を通して、日本でのひどさが浮き彫りにされています。
 激増している非正規労働者の賃金を上昇させること無しに、景気浮揚など期待できないと、著者は主張しています。
 各章の副題は、具体例に出てくる言葉です。ご一読をお薦めします。

  今国会での「派遣法」をはじめとする労働法制の改悪論議と安全保障法制論議、注目が必要です。

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コメント

墓石さん こんばんは。(*^_^*)

私は経済の事もよく解らないのですが、今日
ニュースで7兆の黒字、と言ってましたね。
凄い!好景気と思いましたが、実感はない。
物価は上がりましたね。そして給料は低い人が
多いと聞きます。息子からですが。

若い人もまたこの本の様に中高年が非正規では、
子供の教育もままならないですね。最も大事な年齢に
悪条件の労働。

女性から思うと日本の少子化は当然と思います。
女性が仕事を持ち、子育てでは、夫の育児参加なんて
期待出来ないですよ。公務員位しか。だから産めない。

外国のTVを見ますが、農業でも普通に生活されて
ます。日本は農業も破壊。サラリーマンもこれでは?
富裕は大企業の上部の人ですか?

解りませんが。。。当地は元大企業の人が多く、豊か
みたいですよ。
実態が解りかねて、息子に聞いてます。

投稿: 輝子 | 2015年5月13日 (水) 19時37分

輝子さん、こんばんは。
コメントありがとうございます。

私の知り合いにも、介護現場でブラックな働き方をしている人がいます。
違法すれすれのところで働かされています。
個人で対応するのは大変難しいと思います。
やはり、労働組合は重要ですね。

輝子さんは、新緑の宇治田原に行かれたようですね。
なかなか、さわやかな写真を拝見しましたよ。

投稿: 墓石 | 2015年5月13日 (水) 20時25分

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