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2014年11月19日 (水)

富岡幸雄著「税金を払わない巨大企業」

Zeikin01
 富岡幸雄著「税金を払わない巨大企業」(文春新書)を読みましたので、内容を紹介させていただきます。富岡幸雄氏は、中央大学名誉教授で「税務会計学」の創始者。元国税庁勤務、会社の顧問などを経験され、税金を取る側と取られる側を経験した税金の専門家です。「節税」という言葉を生み出した人でもあるそうです。

 

  では、失礼ながら内容を超約してみます。
 著者は、企業の支払う法人税を考えるとき、「実効税負担率」で考える事が大切だと述べます。「実効税負担率」は、企業の利益のうち、何%を実際に法人税として支払ったかを表します。つまり次の式で表されます。
       「実効税負担率(%)」=「法人税納付額」÷「企業利益相当額」×100 
  著者は、この「実効税負担率」の低い会社35社をつきとめて発表しています。(2013年3月期でみると)
 1位:三井住友フィナンシャル  利益1480億円→ 税額300万円 負担率0.002%
  2位:ソフトバンク            利益789億円 →  税額500万円  負担率0.006%
            ・・・・・・・
   以下、日本の名だたる大企業が続きます。

  1500億円の利益で、税金はたった300万円。なんと驚くべき数字です。現在の法律で定められた法人税率は、35%にもかかわらず、なぜこんなひどいことが起こっているのでしょうか。
 著者によれば、基本的な問題は、課税対象所得を小さくすることが出来る優遇税制、税法上の欠陥、企業側の巧妙な会計処理などであるといいます。著者は、企業が納税額を小さくする方法として、次の9項目をあげています。
 ①企業の会計操作
 ②企業の経営情報の不透明さ
 ③受取配当金を課税対象外に
 ④租税特別処置法による優遇税制
 ⑤内部留保の増加策
 ⑥タックス・イロージョンとタックスシェルターの悪用
 ⑦移転価格操作
 ⑧ゼロ・タックスなどの節税スキーム
 ⑨多国籍企業に対する税制の不備と対応の遅れ
 著者は、各項目について詳しく説明していますが、すべてを紹介するスペースがありませんので、いくつかに絞って説明します。

  まず、「③受取配当金を課税対象外に」です。
 「受取配当金」とは、企業が子会社や他社企業に出資してて得られる配当金のことです。この「受取配当金」については、 「受取配当金益金不算入制度」により、子会社や関連企業からの配当については課税は無し、他社からの配当は50%に対してのみ課税対象となります。海外子会社からの配当については、配当の5%にしか課税はされません。
 このように、グループ内の企業が株式を保有し合えば、配当金への課税を免れ、内部留保することが出来るのです。海外子会社の利益に対しては、配当のわずか5%に対してしか税金はかからないのです。
 著者の試算によれば、「受取配当金」の額は65兆円に上り、課税対象外となった額は、49兆円になるといいます。この額に課税すれば、消費増税分くらいは軽く出てくると述べています。
 次は、「④租税特別処置法による優遇税制」です。
*法人税の税額控除が適用されるもの=「研究開発費」「環境負荷低減設備費」など。
*法人税の延期が適用されるもの=「準備金制度」、「特別償却制度」、「圧縮記帳制度」などです。「準備金」は、損金として算入されるので、課税対象所得を減らしてくれるおまけに、巨額の内部留保として残るわけです。
 次は、「⑦移転価格操作」です。
 海外子会社に低い価格で製品を卸せば、親会社の利益を減らして(つまり節税して)、海外子会社に利益を移転することが出来ます。海外子会社からの利益配当金には、5%分にしか課税されません。円安になれば、さらに円安差益を手にすることが出来ます。海外展開する大企業にとっては、有利な税の抜け穴となっています。

 以上簡単に見てきただけでもわかるように、現在の法人税制は大企業有利、抜け穴だらけだと著者は述べています。安倍政権は、「世界一企業が活動しやすい国に」を掲げ、法人税を20%にすると言っています。さらに、逆進性の高い消費税が増税されました。これでは、税の累進構造が崩れてしまい、格差社会は広がる一方だと、著者は怒りと危機感を訴えています。

 第6章「富裕層を優遇する巨大ループホール」では、1億円の所得を境に、所得の多い富裕層ほど、税率が下がっていく事実が示されます。この原因は、株式譲渡所得や配当所得が分離課税となっていることと「証券優遇税制」などによる、不公平税制にあるといいます。キャピタルゲインに対する税率の低さは、国際的にみても異常であり、世界一であると述べています。
 第7章「消費増税は不況を招く」では、消費税は、「資本主義の最後の税金」というべきものであり、究極の大衆課税であることが述べられています。
 最終章「崩壊した法人税制を立て直せ!」では、消費税ではなく、所得税制、法人税制を立て直さないかぎり、国民経済の繁栄はないと断じています。

 消費税について考えている人には、一読をお薦めします。

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コメント

墓石さん

今回は法人税等についてのご本ですね。
それにしても、大手企業の実効税負担率(%)が
0.002%台とは驚きました。
また、それを可能にするメカニズムも凄いですね。

投稿: kazumi | 2014年11月20日 (木) 06時21分

kazumiさん、こんにちは。
コメントありがとうございます。
経済の話は難しいですね。本当は良く分からないです。
物理学なら、シンプルな基本法則があり、素人でも真偽を
嗅ぎ分けることができます。しかし、お金の話となると難しいですね。

投稿: 墓石 | 2014年11月20日 (木) 10時22分

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