« 定期診察の日(77)・ジャカビの情報 | トップページ | 二十四節気写真「秋分」2014 »

2014年9月18日 (木)

鈴木真奈美著「日本はなぜ原発を輸出するのか」

 鈴木真奈美著「日本はなぜ原発を輸出するのか」(平凡社新書)を読みましたので、紹介と感想を書かせていただきます。鈴木真奈美氏は、フリーのジャーナリストです。

 Genpatuyushutu
  日本では、かっての民主党政権でも安倍政権でも、福島原発事故にもかかわらず原発輸出に熱心です。日本はなぜ原発を輸出しようとするのでしょうか。私などは、「自国の事故すら処理できないのに、原発を輸出するなどどうかしている。」と単純に考えてしまいます。「輸出で儲けたいなら、もっと他に輸出するものがあるだろう。」と思ったりもします。しかし、本書によれば、原発を推進したい勢力、および将来に核武装の可能性を残しておきたい勢力にとっては、原発の再稼働と原発の輸出は絶対に必要なことなのです。原発の輸出までがなぜ必要なのでしょうか。では、著者の主張を超要約してみます。

 まず、原子力利用の歴史から始めます。
 アメリカは、マンハッタン計画で核爆弾の開発に成功しました。ウラン濃縮、核燃料加工、原子炉、再処理といった一連の技術は、核兵器独占のために国家機密とされました。しかし、ソ連が独自に核開発に成功、3年後イギリスもそれに続きます。水素爆弾も開発されていきました。また、イギリス、ソ連、カナダなどが商業用原子炉を開発しました。こうした背景の中で、アメリカは方針転換します。アイゼンハワー大統領の「アトムズ・フォア・ピース」戦略です。原子力分野でのリーダーシップを失わないために、原子力の平和利用としての原発を輸出しつつも、核兵器として転用出来ないよう厳しい世界的体制を確立しようとしたのです。IAEAといった組織も作られました。輸出相手国には、厳しい二国間協定が結ばれました。その後、核拡散防止条約(NPT)、核物質防護条約といった体制が作られていきました。
 核燃料サイクルを維持・管理するためには、莫大な費用が必要です。安上がりに安定して核爆弾を製造し続けるためには、原子力利用を産業として発展させる必要があり、「アトムズ・フォア・ピース」戦略とは、核兵器を独占しながら、それを支える原子力産業を発展させようというものです。産業として成立するためには市場が必要です。原子力市場を支配することにより、核物質を世界的に統制し、核保有国が核兵器を独占するというものだったのです。これにより世界に原発が輸出され、広がっていきました。

 1960年代から世界の原発は増え続けましたが、70年代をピークに減少に転じ、頭打ちとなります。原発の耐久年数を40年とすると、2020年代までに300基が新たに稼働しないと、現在の原子力産業は維持できません。このままでは2050年頃までに、世界の原子力発電は実質的に終わりを迎えることになります。アメリカでも原発建設はストップし、アメリカの原子力産業は、確実に衰退期に入ってきています。市場競争力を失い、自前の原発を輸出する能力すら失われてきています。ウラン濃縮業者のユーゼック社が、破産法の適用を申請するという事態にもなっています。アメリカのGE社のイメルト最高責任者は、「原子力発電は経済的に正当化するのは非常に難しい」と発言しています。
 日本でも原子力産業を維持していくためには、原発の増設は必須ですが、原発の新規増設は難しくなってきています。そこで、新興国への原発の売り込みに成功しなければ、日本の原子力産業は確実に衰退していくことになります。アメリカも、市場への影響力を失わないために日本の企業と提携し、新興国への売り込みを共同で進めようとしています。アメリカ市場への進出、アメリカ企業と提携し新興国への売り込み、これこそが日本の原子力産業生き残りの道というわけです。
 原子力産業が衰退すれば、日本は核兵器製造能力も失うことになります。核兵器製造のための原子力技術・施設をコンパクトに残せばよいと思われるかも知れませんが、発電に使用するわけでもないのに、莫大な予算を投入して核施設を保持し続けることは、核兵器製造の野心を世界から見抜かれてしまいます。
 このように、原発を推進したい勢力、および将来に核武装の可能性を残しておきたい勢力にとっては、原発の輸出は絶対に必要なことなのです。

 核兵器の製造が原子力産業を生み出し、原子力産業の発展が核兵器を支え、核兵器の保有と原子力市場での優位性により世界の原子力政策・核政策が決定されていった歴史、なんとか理解できました。日本の原子力産業の生き残りと将来の核保有のためには、原発再稼働と原発輸出は絶対条件であることも理解できました。
 最近、原子力発電が高コストであることは、広く国民にも理解されてきました。また、核廃棄物の最終処理も見通しがありません。核廃棄物の処理まで含めれば、原発のコストは計り知れません。輸出相手国で発生した核物質の処理はどうするのでしょうか。今のルールでは、当然日本が引き受けることになります。見通しが見えないです。莫大な国費を投入しても、原発に未来はなさそうですね。
 こんなに超約しては、著者に失礼ですね。実際にはもっと多方面にわたって書かれています。一読をお薦めします。    では。また。

|

« 定期診察の日(77)・ジャカビの情報 | トップページ | 二十四節気写真「秋分」2014 »

コメント

>核兵器の製造が原子力産業を生み出し、原子力産業の発展が核兵器を支え、核兵器の保有と原子力市場での優位性により世界の原子力政策・核政策が決定されていった...

核武装と原子力発電、密接に関連しているのですね。それにしても、核廃棄物の問題どうなるのでしょう。

投稿: kazumi | 2014年9月24日 (水) 09時29分

kazumiさん、コメントありがとうございます。

核廃棄物の問題は、将来的に本当にやっかいな問題ですね。
アメリカなどは、広大な安定した土地があるので見通しが有るかも
知れませんが、地震国の日本は見通しは真っ暗なようです。

投稿: 墓石 | 2014年9月24日 (水) 10時30分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/522242/60335183

この記事へのトラックバック一覧です: 鈴木真奈美著「日本はなぜ原発を輸出するのか」:

« 定期診察の日(77)・ジャカビの情報 | トップページ | 二十四節気写真「秋分」2014 »