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2014年7月20日 (日)

J・ダワー、G・マコーマック著「転換期の日本へ」

Tenkanki101   ジョン・W・ダワー、ガバン・マコーマック共著〈 転換期の日本へ―「パックス・アメリカーナ」か「パックス・アジア」か 〉(NHK出版) を読みました。紹介と感想を書かせていただきます。
 共著者のジョン・W・ダワー氏は、マサチューセッツ工科大学名誉教授。専門は日本近現代史・日米関係史。ガバン・マコーマック氏は、オーストラリア国立大学名誉教授。専門は東アジア現代史です。日本や東アジアを研究する二人の知日派海外研究者の意見は、感情的ナショナリズムにかき回されている多くの日本人に、今こそ冷静さが大切であることを語ってくれているように思います。

 テレビでは、「反韓」「反中」「反北朝鮮」ネタの報道があふれ、書店に行けば、この種の本が平積みにされています。「尖閣を守れ」、「北方領土奪還」、「中国は侵略的海外進出を強めている」、「北朝鮮の核・ミサイルの脅威」など、今、巷では感情的なナショナリズムが異様な高まりを見せています。この現象は何を意味しているのでしょうか?
 冷戦はとっくに終わったというのに、日本人の少なくない人は、知らず知らずのうちに、次のような考え方を持たされています。「日本はアメリカ核の傘に守られてきた」、「中国は共産主義で、アメリカは自由主義。したがって、アメリカは中国と戦ってくれるはず。」、「日米同盟がすべての基本であり、その範囲で集団的自衛権行使も必要」などなど。いったいこうした考え方は、歴史的にどのようにして形成されされたのでしょうか?
 これらの疑問に、二人の世界的大家が、この本の中で解答を与えてくれています。
 超簡単にですが、本書の内容を一部分を紹介します。一部分で申し訳ないですが。
 
 戦後、超大国となったアメリカは、「パックス・アメリカーナ」と呼ばれる影響力を全世界に広げました。日本は、サンフランシスコ講和条約と安保条約により、サンフランシスコ体制と呼ばれる「パックス・アメリカーナ」の中に組み込まれました。サンフランシスコ講和条約は片面講和であり、中国や韓国という、日本から最も謝罪を受けるべき国を排除し、日本を最も身近な近隣諸国から引き離す排除のシステムでした。また、安保条約は、ワシントンの当局者さえもが、戦後の最も不平等な条約と認めるものでした。この条約により、アメリカは、日本国内に欲するだけの基地を置き、沖縄を分割占領し戦略的「太平洋の要石」としたのです。第二次大戦は、ドイツ、中国、朝鮮などの分断国家を生み出しました。日本では忘れられているかのように見えますが、日本もまた分断国家となったのです。サンフランシスコ体制は、日本を近隣アジア諸国から孤立させ、アメリカ一国の覇権主義に依存させる構造だったのです。ダワー氏の言葉では、日本は「従属的独立国」、マコーマック氏の言葉では「アメリカの属国」として歩み始めたのです。
 ジョン・ダワー氏は、サフランシスコ体制が残した負の遺産を8つ指摘しています。
 ①沖縄と「二つの日本」  ②未解決の領土問題  ③米軍基地  ④再軍備 ⑤「歴史問題」 ⑥「核の傘」 ⑦中国と日本の脱亜 ⑧従属的独立
 「領土問題」については、次のように述べています。
 「アジア太平洋地域における5つの領土紛争は、サンフランシスコ講和条約にさかのぼることが出来る。アジアにおける共産主義の影響を阻止するというワシントンの包括的戦略に合致するよう、米国が最終草案に滑り込ませたものであった。」「北方領土は、二島返還で日ソの合意が進められたが、アメリカの恫喝により覆された。」・・・国境を曖昧にしておくことが、より日本をコントロールするのに役立ったわけです。
 「核の傘」という節でも、ダワー氏は、日本の従属性を鋭く指摘しています。
「核の傘」の下で生きるとは、日本政府にとって「傀儡政権」として生きることを意味しました。高まる反核運動に対して政府は、国内的には「核の平和利用」「非核三原則」などを装いつつ、朝鮮戦争で対中国への核使用を計画したアメリカと裏では密約を結び、国民を欺きながら二枚舌外交を進めたのです。日本は核兵器により被った悲劇の経験を構築し、核軍縮・核廃絶を促進する、力強くも指導的役割を演じる機会を、おそらく永久に失ってしまったと。
  第二章「属国―問題は『辺境』にあり」においても、ガバン・マコーマック氏のズバリとした指摘が続いています。
 第三章は二人の対談で、東アジア全体を俯瞰して、今後の方向性などが語られます。
  安倍首相は、「集団的自衛権の行使容認」を進めていますが、これは、対米従属の「軍事同盟」であり、「普通の国」にではなく、ますます「属国」化していくことです。
  ジョン・ダワー氏の言葉です。「不思議の国のアリス型倒錯・・・日本を売り渡している者が愛国者を名乗り、国益を守ろうとする者が反日的とされている。」
 マコーマック氏は言います。「日本がアメリカの属国であることは明白だ。そのため日本は、国連やG8、G20サミットなどの国際舞台で、大国にふさわしいしかるべき尊敬も受けられずにいる。」と。
 日本の今後の課題として、「…何よりも戦後日本政府が踏襲してきた米国依存の精神を捨て、政府も国民も自立する事が必要であろう。安倍首相とは違った形の『戦後レジームからの脱却』と、『日本を取り戻す』努力が市民の責務である。」と語られます。
 今、アジアに求められているのは、ワシントンから押しつけられた「パックス・アメリカーナ」ではなく、歴史の共通認識に基づく、一国覇権主義によらない、アジア諸国の共同による平和構築体制である「パックス・アジア」への転換であると。

 二人の意見は、日本のマスコミや保守的な人々が作り上げた日本観・戦後観とは一味違うものです。今の時代であるからこそ、二人の意見に耳を傾けることも、意味あることだと思います。    この本、お薦めします。

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コメント

墓石さん、

いつものように難しくて面白い本を読まれたんですね。
コメントを何度か残そうと思ったのですが、
内容が難しいので、コメントを残しませんでした。

わたしは、上のお二人の研究者のような
細かい歴史的事実は持ち合わせていないのですが、
外から見ていると、日本の政治家やマスメディアは
日本があたかもアメリカの属国であるかのように
振舞うというのは、わたし自身の長年の感想でした。
アメリカに住んでいるわたしが言うのも変なのですが
アメリカはとことん自分中心の国なので、
彼らに頼りすぎると最終的に日本の利益にはならないと
わたしも思います。

投稿: kazumi | 2014年7月23日 (水) 13時12分

kazumiさん、コメントありがとうございます。

政治や歴史の話は、難しいので、何が真実か良く分かりませんね。
いろいろな人の著作を読んで、自分なりの考えを持つしかなさそうです。
アメリカ暮らしのkazumiさんには、私には見えないものも見えていることと思います。
私は未熟者ですので、一つの考えに固執しないように注意しています。
柔軟思考を心がけていますが・・・。

投稿: 墓石 | 2014年7月23日 (水) 14時51分

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