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2014年6月18日 (水)

瀬木比呂志著「絶望の裁判所」感想

 Zetubousbs
   瀬木比呂志著「絶望の裁判所」(講談社現代新書)を読みました。著者の瀬木比呂志は、明治大学法科大学院教授です。裁判官として、最高裁に勤務した経験もある経歴の持ち主です。
 書店の店頭に平積みされていて、この系列書店の書評ランキングも上位でした。私は、あまり流行は追わないことにしていますが、誘惑に負けて買ってしまいました。紹介させていただきます。

 著者の主張を超要旨でまとめてみます。著者には申し訳ないですが。
 著者は、国民の知らない裁判所腐敗の実態を次のように告発しています。
「情実人事に権力闘争、思想統制、セクハラ・・・、もはや裁判所に正義を求めても、得られるものは『絶望』だけだ。」、「国民、市民の期待に大筋応えられる裁判官は、今日ではむしろ少数派、マイノリティーとなっており、また、その割合も、少しずつ減少しつつあるからだ。そして、そのような少数派、良識派の裁判官が裁判所組織の上層部に昇ってイニシアティヴを発揮する可能性も、ほとんど全くない。近年、最高裁幹部による、裁判官の思想統制『支配、統制』が徹底し、リベラルな良識派まで排除されつつある。」
 「日本の裁判所は、事務総局中心体制であり、それに基づく、上命下服、上意下達のピラミッド型ヒエラルキーである。支配・統制のなかで、裁判官たちは精神を荒廃させ、モラルや士気を低下させている。裁判所は、『ソフトな収容所群島』である。」
 著者は、司法改革の方向性については、次のように提言しています。
 日本の裁判所を支える巨大な官僚システムを変革するするために、弁護士などの法曹経験者から裁判官・検察官を任用する法曹一元化制度の導入は不可欠である。最高裁判所事務総局体制を解体し、司法行政権を裁判官会議に、ガラス張りで帰属させる必要がある。憲法判断を活性化するために、憲法裁判所の設置も一つの方向である。・・・・。

 では、感想を。
 東京地裁で砂川事件の判決が出たとき、私は中学生の子供でした。新聞一面の大きな見出しが、今でも頭に焼き付いています。伊達裁判長という名前も未だに記憶しています。その年の内に、高裁を飛び越して、いきなり最高裁で逆転判決が出ました。その時以来、最高裁は支配権力の一部であると思っていました。(その後、当時の最高裁田中耕太郎長官が、アメリカと接触していたことが、アメリカ側の公文書の公開により明らかになりました。)
 私は、法曹制度や法律には無知ですが、三十数年間、裁判官をつとめられた方の内部告発には、やはりそうだったのかという思いが湧き上がって来ます。この告発は、かなりの部分で、真実ではないかという思いがします。
 現在、安倍政権により進められている「集団的自衛権の行使」は、どう考えても最高法規である憲法をねじ曲げています。こんなことが公然と進められているにもかかわらず、司法の力が働かないとすれば、まさに司法は死んでいると言えます。
 また、法曹一元化は、裁判所という官僚的キャリアシステムを変革していく力になるとは思います。しかし、法曹一元化も万能であるとは言えません。例えば、もし大阪の橋下弁護士を最高裁判事に推すような勢力が、権力を握ったとしたら・・・。法曹一元化も民主的な政治が確立しなければ機能しないですね。素人の考えですが・・・。

 先日、大飯原発3・4号機の運転差し止めを命じる福井地裁の判決がありました。樋口英明裁判長は判決文で、「原発は社会的に重要だが、電気を生み出す一手段にすぎず、人格権より劣位にある」、「豊かな国土とそこに国民が根を下ろして生活していることが国富であり、これを取り戻すことができなくなることが国富の喪失であると当裁判所は考えている。」と述べています。権力にとらわれない、素晴らしい判決だったと思います。今後、上級審での審理を見守りたいと思います。
 この本に、少々不満も。
 第五章の「心のゆがんだ人々」は、客観的根拠が乏しく、著者の感情が出すぎている気がして、気分良く読めなかったです。
 また、近年の司法制度改革での裁判員裁判が、刑事系裁判官の復権のための「陰謀」であるという意味の指摘は、裁判所内部の事情を知らない私たちにとって、理解しようにも理解出来ないです。  興味のある方に、この本お薦めです。
                               では。  また。

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コメント

墓石さんは難しい本を読むのがお好きなんですね。
私は法律の世界は全然知らないのですが、
この本に書かれている裁判所腐敗の実態と
私が昔住んでいたアカデミアの世界の実態と
よく似ているなあと思いました。

投稿: kazumi | 2014年6月20日 (金) 14時09分

墓石さん こんばんは。(*^_^*)

やはり!裁判所が腐敗したら、いかなる
社会になるのでしょう。。。
全ての社会構造が腐敗するのでは?

政治家の不正の裁判で、有罪が明らかと
思えるのに無罪。以前から腐敗している!
と思ってました。悲しい事です。

投稿: 輝子 | 2014年6月20日 (金) 19時35分

kazumiさん、コメントありがとうございます。

私は、専門的知識のある分野は、一つもないです。
好奇心だけは旺盛で、素人のくせに、何にでも飛びつきます。
悪い癖ですね~。司法の世界のことは、サッパリ分かりません。

投稿: 墓石 | 2014年6月21日 (土) 00時29分

輝子さん、こんばんは。コメントありがとうございます。

集団的自衛権に、司法がどのような判断を下すのか、また、そんな機会は
やってくるのか、気になります。
しかし、私の頭では、分からないことが多すぎますね。
謙虚に勉強するしかなさそうです。

投稿: 墓石 | 2014年6月21日 (土) 00時43分

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