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2014年5月 8日 (木)

大森与利子著:「心いじり」の時代

  大森与利子著、「心いじり」の時代(雲母書房)を読みました。紹介させていただきます。大森氏は、時代分析、社会評論に取り組んでおられる方のようです。
Kokoroizjiri   私は本を買うとき、便利さに負けてアマゾンなどで買うことが多くなりました。しかし、時には書店にブラリと出かけ、何の予備知識もなく本を手に取り、その場で内容をチェックして衝動買いをすることもあります。チェックが甘く失敗することもありますが、思わぬ良い本に出会うこともあります。この本は、その中の一冊です。

 先日私は、NHKテレビの「クローズアップ現代」で、「折れない心をつくる」という研究が紹介されているのを見て大変驚きました。いよいよ世の中ここまで来たか、という感じを持ちました。強い心を持たなければ、生き抜くことさえ出来ない時代が到来しているようです。
 では、超簡単に本書の一部分の要旨を紹介してみます。

 本書の中で著者は、今の時代を「『心いじり』の時代」と名付けました。
 ・・「児童虐待の増加」「鬱病の増加」「中高年・若年層の自殺の増加」「ひきこもり70万人」等々、センセーショナルに取り上げるメディア報道が顕著である。しかも報道内容の多くは、個人の内的危機に論点が絞られている。そして絶対正義であるかのように、ここぞとばかり「心のケア」の必要が連呼されていく。・・・(まえがきより)
 為政者、権力者や専門家と呼ばれる人たちから、私たちの心は、巧妙にコントロール、つまり「心いじり」されているのです。

 こうした「心いじり」の背景にあるのは何なのでしょうか。著者は、それは新自由主義であると述べます。
 新自由主義的な政策は、小泉政権下で大きく進みました。規制緩和を進め、企業活動の自由度を上げ、市場原理主義に基づく過酷な利潤獲得競争が始まりました。公共部門の民営化も進み、今まで公共が担ってきた分野も民営化され、利潤の対象となりました。人々は、過酷な利益至上主義的な競争の中に投げ込まれたのです。現在、非正規労働は、労働人口の4割に達しようとしています。 派遣切り。リストラ。働く人々は、今や取り替え可能な単なる労働力商品となりました。将来を担う若者さえも、「就活」と呼ばれる正社員を目指す競争の中に巻き込まれました。企業の利益のために、低賃金、長時間労働、自由な首切りという労働力の流動化も進んできました。負け組と勝ち組に社会は分断され、明らかに格差社会は進んできています。
 こうした社会の中で、人々に求めらているのは「自己責任」です。「競争に勝てば、誰でも成功するはずの社会、成功出来なかったのは、自分の努力が足りなかった。スキルアップが足りなかった。」人々はただひたすら、自己探求努力(自分探し)と自己管理努力(自己啓発)に勤めます。多くの人は、経済的な問題はあくまでも個人的な問題、自己責任にかかわる問題としてとらえ、それを社会化、政治問題化しようとする発想には否定的です。生きづらさや将来不安は、個々人の「心」に帰結させられ、自己責任・自助努力の問題とされていきます。人々は、ますます自己責任の闇の中に閉じこめられ、疲弊し、「癒し」や「心のケア」を求めていきます。
 このような社会状況の中で、「心の産業」や「 セラピー産業」が隆盛をきわめています。また、精神医学や臨床心理学は、不安や不信を個人の心の問題として解消する「不安解消産業」の領域として濫用されています。それらが総体として、時代や社会の構造的矛盾を覆い隠す、「視点ずらし」の「目くらまし」装置として機能しているのです。

 著者は、「心いじり」をキーワードにして、現代という時代を縦横に読み解いてくれています。第1部では、「心いじり」の危うさについて、教育・福祉・労働現場の実態を捉えて述べています。第Ⅱ部では、人心が惑わされ、操作・誘導されてしまう今日的様相について述べてます。「心いじり」の先には、偏狭なナショナリズムが待ち受けていると警告もしています。最終章では、「心いじり」という内閉的内面探求にとらわれない「自立的市民」への道筋についても提案しています。      この本、お薦めします。

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コメント

墓石さん こんばんは。(*^_^*)

格差社会を生み出し、鬱、閉じこもりが多くなり、
権力者やマスコミ等に踊らされてるのでしょうか。
シャッター街見ても悲しくなります。

地方では20~30代の女性が減少してるとか。
少子化の原因は国政が原因もあります。また若者の
気質もあるのかも?贅沢に育ち過ぎ?

何処へ行っても悪が蔓延り、この世の中に多少
失望してる自分がいます。だから自然の中に行き、
写真やってるのかも(笑)

大企業の利益ばかり求める社会を何とか?
根本的に変える必要がある気がしますね。

投稿: 輝子 | 2014年5月 9日 (金) 18時47分

輝子さん、こんばんは。
コメントありがとうございます。

日本の行く先がかなり心配です。
私は、日本国憲法とともにこの世に生まれました。
まもなく、憲法とともに死にそうです。

「霧の宇治川」拝見しました。朝霧、なかなかいいですね。

投稿: 墓石 | 2014年5月 9日 (金) 20時17分

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