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2014年3月25日 (火)

松竹伸幸著「集団的自衛権の深層」感想

 松竹伸幸著「集団的自衛権の深層」(平凡社新書)を読みました。お薦めの感想を書かせていただきます。松竹氏は、ジャーナリスト、日本平和学会会員です。
Photo  集団的自衛権行使の問題で、世間がうるさくなってきています。4月には、安倍首相が設置した「安保法政懇」の報告を受け、集団的自衛権行使の閣議決定を行おうとしています。こんな折、「集団的自衛権」とは何かを知りたい人には、本書をお薦めします。
 「集団的自衛権は、国連憲章51条に定められた、すべての国家が持つ固有の権利であり、集団的自衛権を行使するのが普通の国である。日本は憲法の制約によりこの権利を行使できない。」という理解をしていていませんか? そんな理解をしている人には、この本は特にお薦めです。また、「集団的自衛権行使に賛成すべきか、反対すべきか」を悩んでいる人にもお薦めです。この問題は、賛成か反対かを多数決で決めるような問題ではないのです。この本を読めば納得出来ます。

 では、本書の一部を超簡単にまとめてみます。失礼なことですが・・。
 まず、著者は、「集団的自衛権」と「集団安全保障」という二つの言葉を混同しないようにと述べています。
 国連憲章2条4項は、すべての加盟国の武力の行使を禁止しています。もし、違反して侵略行為をする国が出てくれば、安全保障理事会の決議により、この国に様々な制裁を加えることが出来るのです。これが「集団安全保障」なのです。
 憲章全文はこちら→http://www.ne.jp/asahi/nozaki/peace/data/data_un_all.html 
 では、集団的自衛権とは何でしょうか? ソ連とアメリカが対立していた冷戦時代、双方の拒否権により、安全保障理事会は機能不全に陥り、その妥協の産物として、憲章51条が追加されました。侵略があった時、国連が乗り出してくるまでの間、集団的自衛権を認めようということが、憲章51条で決められたのです。
 しかし、この51条の集団的自衛権の運用の結果、価値観の同じ国が集まって、価値観の違う国に対抗することが進みました。NATOやワルシャワ条約機構などの軍事同盟の対立です。つまり、集団的自衛権とは、軍事同盟を結ぶ権利の意味になったのです。これは国連憲章の根本精神に反する事態です。冷戦の対立が、国連に大きな矛盾を持ち込んできたのです。

 冷戦下で、ソ連、アメリカ、イギリス、フランスの4大国は、集団的自衛権の行使を口実に、世界で紛争を繰り返してきました。
 ★ソ連=ハンガリー介入(1956)、チェコスロバキア侵略(1968)、
    アフガニスタン介入(1980)。
 ★アメリカ=レバノン・ヨルダン介入(1958)、ベトナム侵略(1966)、
    グレナダ介入(1983)、ニカラグア介入(1984)。
 ★イギリス=レバノン・ヨルダン介入(1958)、イエメン介入(1964)。
 ★フランス=チャド介入(1986)  
 以上の例から分かるように、集団自衛権を実際に行使したのは、4つの大国しかないということです。大国のやり方に批判を強め、自主的な国作りをしようとする国が現れたとき、それを大国が、集団的自衛権を口実に介入して、押しつぶしたというのが実態なのです。
 集団的自衛権は、「自衛」とは何の関係もなく濫用され、国際法に対する重大な違反行為を生み出したのです。したがって、集団的自衛権の行使に賛成するとか反対するとかという議論は、議論をしている立場そのものが狂っているのです。強盗に入るべきか入らざるべきかを議論しているのと同じです。

 冷戦終了後、集団的自衛権の行使ではなく、安全保障理事会の主導による紛争処理の動きが強まりました。イラクのクェート侵攻に対して、安全保障理事会の決議に基づく多国籍軍が大きな役割を果たし、イラクを撤退へ追い込みました。
 90年代には、多くの紛争が発生しました。カンボジア、東チモール、ハイチ、ユーゴスラビア、グルジア、ソマリア、ルワンダなどです。国連は、集団的自衛権の行使を容認する形ではなく、直接に介入する方向で努力をしました。結果は必ずしも成功と言えないまでも、乱用されやすい集団的自衛権ではなく、国連の枠組みで対処しようという動きが強まっているのは確かです。
 集団的自衛権にこだわるアメリカが主導し、集団的自衛権の行使により行われた「対テロ・アフガン戦争」では、イスラム世界と西側世界の亀裂が深まり、世界はより危険になったと言えます。
  冷戦時代に国連に持ち込まれた矛盾である集団的自衛権の濫用を押さえるのが、国際政治の流れといえます。

 超要約すれば、以上のようにまとめられるかと思います。国際法学会や国際司法裁判所の流れについても書かれていますが、長くなりますので省略します。ちょっとまとめ過ぎかもかも知れませんね・・・。

 現在、安倍政権により進められようとしている集団的自衛権の行使は、アメリカとの軍事同盟に他なりません。アメリカの進める戦争に付き従い、戦争できる国になるということです。
 2013年4月の国会で、安倍首相は、「侵略の定義は、学界的にも国際的にも定まっていない。国と国との関係でどちらから見るかで違う。」と述べ、日本の過去の侵略戦争を肯定しようとしました。こんな人物に、世界の平和やアジアの平和を語る資格はありません。     この本、お薦めします。

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コメント

墓石さん おはようございます。(*^_^*)

集団的自衛権、、、今までの日本が大きく変わるのを
         感じます。怖さが襲います。
         平和だった世が、武器を持つかも?

しかし隣国の脅威はどうすればいいのでしょうね。
今の自衛隊では駄目ですか?

投稿: 輝子 | 2014年3月28日 (金) 08時57分

輝子さん、おはようございます。コメントありがとうございます。

中国や北朝鮮の脅威が、さかんにマスコミで取り上げられています。
これをテコに、日本の軍備強化と日米同盟の強化が進められていますね。
これでいいのかどうか、冷静に考える時が来ています。
しっかり考えたいと思います。

投稿: 墓石 | 2014年3月28日 (金) 09時17分

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