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2013年11月11日 (月)

鈴木宣弘著「食の戦争」

4178n7urfcl__sl500_aa300__2    鈴木宣弘著「食の戦争」(文春新書)を読みました。お薦めの感想を書かせていただきます。著者の鈴木宣弘氏は、農林通産省(国際部国際企画課)、九州大学大学院教授、コーネル大学客員教授を経て2006年より東京大学大学院農学国際専攻教授です。専門は農業経済学で、数多くのFTA交渉にも携わった方です。

 「食」は、人の命を支える基本です。日本は、食料自給率は40%切り、さらに例外なき関税撤廃のTPP参加により、農業崩壊の危機にさらされています。「食」をめぐる日本の現状は危機的です。
 食料は、エネルギーと並ぶ国家存立の柱です。これは世界の常識です。アメリカは、市場原理主義に基づくグローバル経済を押し広げ、その中で食料を戦略物資と位置づけ、着々と支配を強めています。著者は、これを「食の戦争」と名付けました。この「食の戦争」において、日本はTPP参加により、自ら国家の安全保障を放棄する方向に進んでいると、著者は警鐘を鳴らしています。
 日本の農産物は、アメリカやオーストラリアに比べてコストが高くつきます。しかし、高いからといってすべてを安い輸入品に任せればどうなるでしょうか。アメリカは徹底した食料戦略によって、「安く売ってあげるから非効率な農業はやめなさい」と諸外国にグローバル化を押しつけ、世界の農産物貿易自由化を進めてきました。その結果、2008年の世界的な食料危機に際しては、投機的な食料価格の高騰が起こり、途上国では暴動も発生しました。特に、ハイチやフィリピンなど主食の国内生産を手放した国々においては、被害が甚大でした。「食」は、まさに国家存立の基盤となるべきものであると、著者は訴えています。

 種子などの農業生産分野でも、枯れ葉剤で悪名高いモンサント社などのグローバル企業の支配が強まっています。日本人の多くは、日本の農家が使用する種子の90%が、国外産であることを知りません。食糧自給率が40%を下回っているという話以上の大問題です。しかも、種子の80%以上がF1種子です。F1種子とは、雑種第1代という意味です。雑種1代目では、優性遺伝子が発現しますが、第2代目になると劣性遺伝子も発現します。そのため品質が安定せず、採種して次の年に使うことは出来ません。したがって、農家は毎年、種苗会社から種子を買い続けなければなりません。モンサント社は、遺伝子組み換えにより、特定の農薬しか効かない種子を特許生産し、その農薬とセットにして販売し、世界の種苗市場、農薬市場を独占しているのです。遺伝子組み換え作物についての安全性の問題もあります。今や世界の農業が、一部の遺伝子組み換え独占企業に支配されてきていると述べています。

 日本は、トウモロコシの9割、大豆の8割、小麦の6割をアメリカから輸入しています。NHKスペシャル(2008年)でアメリカ穀物協会幹部が「小麦は我々が食べるので遺伝子組み換えにしない。大豆やトウモロコシは家畜のエサだから構わない」と述べたことなども紹介し、著者は、TPPについて、「食」の安全性分野でも重大な懸念を指摘しています。

 この本は、第5章で「アメリカの攻撃的食料戦略と日本農業への誤解」、第6章で「日本の進むべき道『強い農業』を考える」と展開します。TPP交渉が進められている今こそ、読むべき一冊だと思います。
 安ければよい、目先の自分の利益しか目に入らない、「今だけ、金だけ、自分だけ」という生き方に流されている日本人への、警告の書でもあります。お薦めします。

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コメント

私たちがもっと知っておかないといけないことがたくさん書かれている書物のようですね。食糧自給率や食の安全には私も大変、関心をもっています。

投稿: 光石 | 2013年11月11日 (月) 20時43分

光石さん、コメントありがとうございます。

日本の農業は、本当に深刻な状態に陥っています。
農業を滅ぼして國が成り立つわけがないですね。
そのうち食料高騰か、餓死者がうまれるような
事態になりそうな予感が・・・・。

投稿: 墓石 | 2013年11月11日 (月) 20時57分

墓石さん こんばんは。(*^_^*)

以前から農業を潰してどうなるのだろう?とは
思っていました。せめて主食だけでも自給力が
あって欲しいですね。

種子や農薬がアメリカの独占企業とは全く
知りませんでした。
金銭欲にこんなにまで!

目の前の事ばかりに囚われてると
先が怖いですね。

投稿: 輝子 | 2013年11月15日 (金) 16時52分

輝子さん、こんばんは。

農業問題は、大変な所に来ていると思います。
主食の米は、守り抜いて欲しいものです。
食料で国を支配されてはたまりませんね。

今日は、宇治田原に柿の様子を見に行っていました。
師匠のTa氏と偶然出会いました。
輝子さんは、ものすごく写真が上達したと言っておられました。

投稿: 墓石 | 2013年11月15日 (金) 20時28分

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