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2013年8月18日 (日)

島本理生著「七緒のために」

Nanao01  島本理生著「七緒のために」(講談社)を読みましたので、拙い感想を書かせていただきます。
 島本理生さんは、史上最年少の20歳で野間文芸賞を受賞された方のようです。
 本の帯に、「二度と帰らない友情のきらめき、そして痛み、純粋さゆえに傷つきあう少女の日々を描く、珠玉の物語。」とありました。この宣伝文句につられて、ついつい買ってしまいました。結果。この本に共感するには、私は歳をとりすぎていて、しかも男、ちょっと失敗でした。しかし、心に引っかかるものが残りましたので紹介します。

 東京の中学校に転校した2年生、主人公の雪子は同じクラスの七緒と出会い、誘われて美術クラブに入部します。二人はしだいに引かれ合っていきます。相手を求めれば求めるほど、うまく関係が作れない不安定な二人の友情が綴られていきます。美術部顧問の自殺。スクールカウンセラーとのやりとり。二人だけの世界に雪子をつなぎ止めておくため、果てしなく嘘を積み重ね続ける七緒。クラスの中で孤立を深め、しだいに学校に登校しなくなる七緒。母を使用人と呼ぶ七緒。満たされない親子関係。七緒はなぜ嘘をつき続けるのか、嘘に引き回され、雪子はしだいに疲れきっていきます。生まれて初めての言葉をたくさんくれた七緒。雪子は疲れながらも七緒との関係を求め続けます。スキー学習の夜。雪の中で二人は激しく求め合い衝突します。
 しかし、このドラマの背後には大きな仕掛けが潜まされていました。雪子もまた、七緒に対して大きな嘘をしかけていたのです。以前の女子中学で挫折し転校してきた雪子。離婚調停中の雪子の家庭。仮面を付けていた雪子は最後に独白します。「どうでもよかったのだ。自分さえ守れれば、他人も七緒のことも。幼い笑顔もわざとらしい振る舞いも綺麗すぎる少女小説もむしろ好みじゃなかった。一番大きな嘘をついていたのは自分だった。・・・・」と。 
 七緒の嘘に気づきながらも七緒を求める雪子。雪子の嘘を見抜きながらも雪子を救おうと嘘を続ける七緒。求め合えば求め合うほど傷ついていく二人。流星群の夜。二人は別れを迎えます。そして、雪子は自分の嘘の象徴である伊達眼鏡をはずし、七緒が自分の嘘を見抜きつつも、許容してくれていたことを悟りながら、美術室を去っていきます。
 
 割れた鏡が敷き詰められた荒野を二人の少女が、お互いを求めながら、交互に光となり影となり、素足で走っていきます。割れた鏡は、二人の少女の放つ光を反射させて、キラキラと美しく輝いています。彼女たちを温かく包むことの出来なかった家庭は、荒野に灰色の影を投げかけています。美しく燦めく荒野を進めば進むほど二人の素足は、痛々しく傷ついていきます。・・・そんなイメージを湧かせてくれる作品です。
 私は中学校で教えていました。女生徒たちの理解不能な反抗。係わりようもない友達同士の対立。自己中心的とも思える行動。灰皿を投げつけられたこともありました。女生徒の気持ちが理解できない、いや理解しようとしていなかった私自身を苦々しく思い出します。この作品の中に登場する「ちりめんじゃこのような目をした担任」は、まさに私のことなのだと思えてきます。
 私が粗末に扱った少女たちへの懺悔の念を込めて、この本お薦めします。ただし、繊細な少女時代を送った人に限ります。粗暴な男子、および老人にはお薦めしません。
                では。 また。

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コメント

墓石さん おはようございます。(*^_^*)

女生徒って難しいでしょ。小学校の時、少女雑誌に
嵌った事もありましたが、苛める子があったり、
仲良しの子があったりです。女子校へ行きましたが、
そこはどちらかと言えばお譲さん学校。気楽な雰囲気
でした。

この小説程ではないけど、女の子同志の仲良しを
作るまでが大変。この人達の様に、嘘まではつかない
けど、葛藤がありますね。家庭環境がイマイチの
子もありますし、両親が仲良い人は人格も大変
良かったですね。

おうような人が多く、孤立する人も無かったし、
苛めもなかった中高生だったです。しかし小学校
の苛めの酷さには辛かった!中学へ行ってほっと
しました。

少女達が嘘をつきながらも、自分に引き込もうと
する気持ち解る気がしますね。しかしそんな関係は
破れますよね。痛々しいですね。

解らない面がまだ多い年代でしょ。私もあの時、こう
言ってあげたら良かった、とか思います。

投稿: 輝子 | 2013年8月20日 (火) 08時18分

輝子さん、おはようございます。
コメントありがとうございます。

女の子は難しいです。良く理解できないことが時々ありました。
苦手なので避けていましたが、すぐ見抜かれてしまいます。
それで、困難が倍になって返ってきました。
苦労しました。後悔が多いです。

「雲場池」と「八重の桜」の記事など、ブログ拝見しております。
 私の家のポストに、いつもクリスチャン新聞を入れてくれる方がいて、
いつも楽しみに読んでいます。かなり前から、トップの記事が八重の桜です。
キリスト教がどのように描かれるのか注目のようです。
私は大河ドラマ嫌いですが、時々見ています。

投稿: 墓石 | 2013年8月20日 (火) 09時47分

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