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2013年8月15日 (木)

消費税増税の基本的問題点(2)

 前回の「消費税増税の基本的問題点」の続きです。

  【消費税と輸出還付金制度】
 消費税の持つ重大な問題点に、「輸出還付金」の問題があります。
 輸出還付金とは、輸出企業が消費税から還付されるお金のことです。2012年度の輸出還付金総額は、2兆5千億円になります。10兆円の消費税収入の4分の1にも当たる額が、輸出企業に支払われているのです。その半分は、日本の輸出大企業トップ20社に支払われています。理由は簡単です。輸出企業は、仕入れの時消費税を払ったのに、外国の消費者からは消費税が取れないからです。輸出企業は、その分を補填してもらっているわけです。この制度は当然の制度のように見えます。
 しかし、問題は、大企業が下請け企業に対してまともに消費税分を払っていないということにあります。価格支配権は大企業にあります。下請け企業は税務署ではありません。強引に消費税分の金額を大企業から徴収することは出来ません。それどころか、コストカットで、製品そのものの価格まで切り下げられている現状があります。したがって、消費税は、輸出大企業にとって優遇された有利な税制であると言えます。例えばトヨタは、2010年度2200億円の還付を受けています。驚きです。
 ヨーロッパの国々では、1954年にフランスで最初の付加価値税(消費税)が導入されました。GATTでの自由貿易協定が発足し、ルノーなどの輸出大企業へ直接的補助金が出せなくなり、そのため、輸出還付金付きの付加価値税が導入されたのです。付加価値税(消費税)は、このように誕生の時から輸出企業に対する「影の補助金」という意味を持っていたのです。

   【新自由主義と消費税】
 資本主義が福祉国家として成熟して行くにつれ、資本の生み出す利潤率は低下します。利潤が社会保障などにまわる分、利潤率が低下するのです。様々な規制も利潤率を低下させます。例えば、労働時間は8時間とか、女性の深夜労働の禁止とか、解雇の規制とかです。製品の安全に対する規制もあります。利益優先で暴走しようとする資本を規制するためには、規制は必要ものなのです。しかし、経済がグローバル化する時代になると、これではグローバル競争に負けてしまいます。ここで登場したのが新自由主義です。
 新自由主義とは、グローバルな多国籍企業の利益を擁護するために登場した経済政策と言えます。社会保障の切り下げ。安い労働力を派遣労働として確保し、解雇が自由に出来るような規制緩和。製品の安全に関する規制緩和。保育、交通などの公共サービスを民営化し、安い労働力を利用し利潤の対象とする。・・・などです。「小さな政府」、「市場原理主義」、「民営化」、「規制緩和」、「道州制」など、新自由主義政策は、さまざまな顔を見せながら、進められています。
 
 輸出大企業を中心とする経団連は、新自由主義的政策を進める司令塔のような役割を演じています。その経団連は、「平成25年度税制改正に関する提言」で、次のように述べています。
 「社会保障の財源として、消費税が望ましいことは繰り返すまでもない。消費税は資本形成を阻害せず、企業の国際競争力や我が国の経済成長に関して中立的な税であり、税収の安定性や世代間負担の公平性という面においても、他の税目に比べ優れている。」
 
 今後増加する社会保障財源を賄うためには消費税の引き上げが避けられないと、考えている人もいると思います。しかし、社会保障財源を消費税に求めるということ自体が間違っています。医療保険、介護保険、公的年金保険の財源の多くは社会保険料です。これらの社会保険料は企業と労働者の折半で負担しています。社会保障財源を消費税に求めるということは、これまで半分を負担してきた企業の負担をなくすことです。つまり、「企業の負担を減らし、その分、貧乏な人からも高い税率で負担させろ!」という主張なのです。まさに、「資本の形成を阻害せず・・・」です。消費税は日本の新自由主義的政策の中心的政策の一つなのです。
 「社会保障は消費税で!」というスローガンは、日本の新自由主義者が国民をだますために考えた素晴らしいスローガンですが、ヨーロッパでは通用しません。付加価値税(消費税)により社会保障をしているという考えはないのです。
 ヨーロッパで社会保障が日本より充実しているのは、消費税率が高いからだ、と思っている人もいると思いますが、それは違います。表面的な税率で比較するのは間違いです。ヨーロッパでは生活必需品への免税措置などにより、国家予算全体に占める消費税の割合は、消費税5%の日本とほぼ同じです。日本はこれ以上消費税率を上げると、実質税率では、ヨーロッパを越えることになります。一時期マスコミで、「ヨーロッパは社会保障が充実=消費税率が高い」ということが宣伝されました。まさか、いまだにこの説を信じている人はいないとは思いますが、念のために書いておきます。

 表面的な議論に惑わされず、消費税の行方をしっかりと考えたいものです。

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