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2013年5月28日 (火)

今野晴貴著「ブラック企業」

 今野晴貴著「ブラック企業」~日本を食いつぶす妖怪~(文春新書)を読みました。著者の今野晴貴氏は、労働相談を受け付けているNPO法人POSSEの代表です。

 日本では、小泉構造改革により非正規労働が急増しました。今では、働く人の3人に1人が非正規労働者です。所得が200万円以下の人も1100万人を越えています。また、新卒の若者たちは、何十通ものエントリーシートを提出し正社員を目指す、「就活」という異常な競争の中に置かれています。正社員に対しても攻撃は進んでいます。アベノミクスという新自由主義的な経済政策を進める安倍首相は、「雇用支援策を雇用維持型から労働移動支援型へシフトさせる」と提言しました。これは、正社員の解雇規制の緩和、つまりリストラ推進援助法の制定です。また、産業競争力会議で、「職種や勤務地を限定した『準正社員』の雇用ルールをつくる」ということも提案しました。準正社員とは、職種転換や転勤を伴わない、もちろん昇進もない雇用のことです。これも解雇の自由化です。例えば、事業所が他地域に移動すれば、「準正社員」は、自由に解雇できるようになるわけです。
 先日、世界的大手アパレルメーカーである「ユニクロ」の新卒社員の5割が、早期退職をしていることが報道されました。しかも、退職理由の4割が鬱病によるものだそうです。また、ユニクロの柳井会長は、社員の世界同一賃金を言っています。賃金の低い外国人労働者に日本の労働者の水準を合わせようというわけです。低賃金労働の推進です。
 日本はかってから、会社のためにはサービス残業は当たり前、単身赴任なども当然とする風潮がありました。それに加え、正社員は準正社員へ、準正社員は非正規社員へ、非正規社員はより過重な低賃金労働へ。解雇は自由。・・・・こんなことが進めば、日本の労働環境はますます悪化する一方です。若者たちの未来が食いつぶされていきます。
 私は以上のような問題意識を持っていましたが、この本、私が常々感じていた問題意識と一致しました。前置きが長くなりましたが、紹介させていただきます。

 この本の著者は述べています。
 ~ブラック企業とは、今や「暴力団のフロント企業」という意味ではない。日本の社会問題であり、消費者の安全を脅かすばかりか、日本の経済・雇用システムを破壊してしまうものである。~
 第一章では、著者が相談を受けたブラック企業の実態が明らかにされます。IT業界では成長企業として知られるY社、超大手で海外展開もしている衣料品販売会社であるX社での実例が示されます。
 第二章では、過労死や自殺者を出した企業の実態が、社の実名をあげて説明されます。自殺者を出した「ウェザーニュース」。過労死事件の外食大手の「大庄」。労災死を認めない「ワタミ」。ローソンの子会社「SHOP99」での名ばかり店長問題。
 第三章は、「ブラック企業のパターンと見分け方」。
 第四章は、「ブラック企業の辞めさせる技術」。解雇せずに自己都合退職に追い込む辞めさせる手法が具体的に述べられます。
 第五章は、「ブラック企業から身を守る」です。
 第六章では、若い有能な人材を使い潰し、「自己都合退職」に追い込み、精神疾患を患わさせ、公的医療保険に負担を与え、生活保護予備軍を増大させ、結局、「日本」という資源を食いつぶして行く、ブラック企業の正体が述べられます。
 第七章は「日本型雇用が生み出したブラック企業の構造」。第八章は、「ブラック企業への社会的対策」です。

 新自由主義的な経済政策が進められ、日本の企業はますますブラック化してきています。JR西日本の「日勤教育」と呼ばれる厳しい労務管理の問題が、事故をきっかけに明らかになったのは記憶に新しいです。日本郵便での、社員に過酷なノルマ課す「自爆営業」と言われる実態も大きく報道されました。このままでは、日本の働く人々は、ますます困難に陥っていくことになります。生活保護予備軍は増大しています。日本は、人的資源を頼りにする国です。このまま、人的資源を食いつぶせば、日本社会は危機に陥ることは間違いないです。
 アベノミクスによる解雇規制緩和法案、注目しなくてはいけません。
          この本、お薦めします。

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コメント

墓石さん こんんちは。(*^_^*)

人間て自分の事しか考えないという資質を
持ってるでしょ。企業も自社が儲かればいいので
しょうね。悲しい現実かな、とは思います。

自殺者が出たり、過労死が出ても、痛切に考え
ない、お金の亡者なんでしょう。

益々そういった企業が増えて行くのは、本当に
この日本どうなるのでしょう?少子高齢化なのに
この上繁栄があるとは思えないですね。若い人が
安心して働ける日本でありたいですね!

投稿: 輝子 | 2013年5月30日 (木) 12時05分

輝子さん、こんにちは。
コメントありがとうございます。

ほんとにお金の亡者のような風潮が広がってきていると思います。
人をコストとしてしかとらえていないように思えます。
ひどい世の中になりつつあるように思います。

天気が悪いので、ここ数日家の中で本ばかり読んでいました。
私は、人間が小さいので、不平不満が多いです。
これは、健康上も精神上も良くないですね。

「若葉の宇治川」拝見しました。さわやかで良いですね。

投稿: 墓石 | 2013年5月30日 (木) 13時59分

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