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2012年7月 2日 (月)

「それをお金で買いますか」

 マイケル・サンデル著、「それをお金で買いますか-市場主義の限界」(早川書房)を読みました。マイケル・サンデルはハーバード大学の教授で、大学での講義が、NHK教育テレビ『ハーバード白熱教室』(全12回)として放送されました。また、講義は書籍化され、『これからの「正義」の話をしよう』は、ベストセラーになっています。
 本の紹介と感想です。
 
 レーガンとサッチャーの時代に始まった新自由主義は、今や世界の資本主義の基本的潮流となっています。市場こそが自由と繁栄の鍵だとする市場信仰。公共の福祉を投げ捨て市場化する規制緩和。ありとあらゆるものが商品となり、市場の中にたたき込まれています。サンデル氏は、これを「市場勝利主義の時代」と呼んでいます。
 この市場勝利主義のもとで、「すべてが売り物」となり、売ってはいけないものまでが「売り物」となる社会が進行しいます。なんでも買えてしまう社会がもたらしたのは、富を持つ人と持たない人の不平等、公平性の破壊、道徳性の腐敗であるとサンデル氏は述べています。

    (抜粋)・・・あるものが「商品」に変わるとき、何か大事なものが失われることがある。・・・その「何か」こそ、私たちがよりよい社会を築くうえで欠かせないものなのでは?・・・われわれがこんにち直面する道徳的・政治的難題は、・・・社会的慣行、人間関係、日常生活における市場の役割と範囲を考え直すことなのである。・・・

 「第1章:行列に割り込む」では、行列というキーワードをめぐり、「商品」にしてはいけないものが論議されます。
  ・手荷物検査の待ち時間を短縮できるオプションが約5ドルで販売
   ・ラッシュアワー時に10ドルを払えば、より速く走れる車線を走行できる。
   ・高い料金を払えば「いつでも」診てもらえるドクタービジネスも存在。
   ・医療を受けるための行列に裕福な人が割り込めるシステム。
   ・・・・・・・・
  「第2章:インセンティブ」では、インセンティブ(報奨金)と罰金・料金をめぐる問題が論議され、健康、教育、出産、難民、環境保護などの非市場的領域に、市場が入り込んでくると、道徳的規範が脅かされることが述べられます。
   ・薬物中毒の女性が不妊治療を受けると300ドルの現金を与えるという取組み
   ・成績不信の学生を勉学に向かわせるため、高得点を取ると金銭を支払う学校。
   ・「絶滅危惧種のクロサイを殺せる」権利がハンター向けに販売されている。
  ・環境汚染権の売買
   ・・・・・・・・・・・
  「第3章:いかにして市場は道徳を閉め出すか」では、子どもや臓器や血液の売買など、本来商品でないものを商品化することにより、公共生活を成り立たせている非市場的社会規範や道徳規範を閉め出してしまうことが述べられています。

   「第4章:生と死を扱う市場」では、会社が従業員に生命保険を掛ける「用務員保険」。他人の生命保険を買い取り証券化した「ライフセツルメント保険」など、他人の死を売買する恐るべき商品が論議されます。

   「第5章:命名権」では、日本でも広がりつつある「命名権」についても、鋭く批判します。「われわれが望むのは、なんでも売り物にされる社会だろうか?」と。

  新自由主義の下で進められた「市場勝利主義」により、社会の公共性が破壊され、利他心、寛容、連帯、市民精神などの道徳性が腐敗させられている、というサンデル氏の主張に、私は大いに賛同します。市場的なつながりだけで、人間は結びつているのではないのですね。よく理解できました。この本お薦めします。
 しかし、少しだけ限界も感じます。リーマンショックを引き起こした新自由主義は、退場すべきであるにもかかわらず、依然として世界の主流となっています。ヨーロッパではユーロ危機が引き起こされ、日本でも、「民営化・規制緩和」の流れは止まっていません。「税と社会保障の一体改革」と呼ばれる、巧妙にカモフラージュされた新自由主義政策が進行しています。社会科学的視点を抜きに、社会の変革は語れません。
                  では。 また。

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